2022年 ありがとうございました

  二年続けて喪中のため新年のご挨拶は失礼いたします。
 旧年中はたいへんお世話になり、ありがとうございました。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 で、明けて早々ですが、2022年のうちにできなかった振りかえりを、まずは作文関連からまとめていきます。2021年の振りかえりにも同じようなことを書いた気がしますが、そもそも振りかえるほどの内容があるのか……? という感じで正直つらいです。いやでも、自分の現状から目を背けないことが大事だよ! 見つめろ足下を!

【同人誌・企画など】

『胡蝶 痛覚懐古作品集2006』
『浅い傷 痛覚懐古作品集1999-2019』

 2022年5月29日の第34回文学フリマ東京にて二点同時発行。いずれも再録です。
 この数年、バンドものを集めた短篇集を作る作ると言いつつまったく手をつけられずにいたのですが、ある瞬間に「あっこれ私、もう作れないな」と急にわかってしまったんですよね。じゃあ潔くあきらめよう、と思ってその本に入れるつもりだった「胡蝶」「夢のなかで、ふるえながら」の二篇を再録し、あとがきのみ書き下ろしたのが『胡蝶』です。2002年ぐらいからだらだら書き始め、2006年の第5回文学フリマで完成品として出したコピー誌の内容をほぼそのまま収録しているという蛮勇……なんだけど、あとがきを書きたくて作ったんじゃないかというところもちょっとあり、あとがきだけでも読んでもらいたい……
『浅い傷』はウェブサイトのいちコンテンツとして置いていたエッセイを中心にまとめた再録集です。比較的最近書いたものも入っているんですが、とはいえ1999年(24年前!)の文章を平気な顔で載せていて、いったいどんな神経なんだ……。いや、20年ぐらいロリポップ!サーバで運営していた個人サイトを昨年の夏に閉めまして、以降はここを今後の拠点にしているのですが、その閉めたサイトの記念碑みたいなつもりで作りました。文章を書き、公開する、という活動の原点が詰まった一冊です。
 語り始めるといくらでも語ってしまう……こんな感じで個人的な思い入れは過剰にある本なのですが、それゆえおすすめもしづらい……私以外のひとに需要があるのかまったくわからない……。作ってよかったことは間違いないのですが。しかし刷り数を読み誤って(半分にすればよかった)在庫がめっちゃあり、悲しいので読んでみていただけるとうれしいです。

『Namarie』

 2022年11月20日の第35回文学フリマの前日に突然作成したレターセット。
「Namarie」(『指輪物語』に登場する上のエルフたちのことばで「さようなら」を意味する)というタイトルどおり、私の個人的な別れにまつわるテキスト「七年」「あおのはなし」「感情の埋葬(あなたの名前を書けなかった話)」の三つをポストカード・A5・B5の三種類の紙に刷り、封筒に入れて手紙の形にしました。
 私は非常に親密だった友だちとの別れを十年以上引きずっており、定期的にそのことを吐き出すように書いてしまっていて、これも何かかたちにして封をしたいと思いつつ、なかなかできずにいました。たぶん、構想段階で「せっかくだから新しくあれとこれを書こう」とか欲張ってしまうんですよね。だったのですが、イベント前日にちょっと動揺するできごとがあり、めちゃくちゃ誰かに聞いてもらいたかったものの話すこともできず、気がついたらこのレターセットを作っていました。
 イベント頒布分は海図のレターセットに印刷しましたが、これは別れた友人と親しかったときに一緒に訪れた神戸の海文堂書店で買ったものです。海文堂書店も十年くらい前に閉店してしまいました。このレターセットは使いきってしまいましたが、別の紙でもよければ作れますので、もし欲しいというかたがいらしたらお知らせください。テキストじたいはすべてオンラインで公開しています。

 以上です。再録ばっかりで新規のテキストがない……ほんとうに情けないです。
 さんざんツイッターで愚痴ってしまいましたが、去年は勤務先で2月に異動してからというものどうにもこうにも仕事が無理すぎて……2022年12月31日が〆切だった文藝賞の短編部門に応募する、という目標もあったのですが、一文字も書けないまま当日を迎える体たらくでした。ふがいない……
 書きたいことがない、書くことがないなら無理してもしかたがないし、一度「小説を書かなければ」と強迫的に思い込むのをやめてみたほうがいいのかも……とも何度となく思ったのですが、読んだり書いたりすることをあきらめて賃労働だけする生活をしていたら本格的に虚無にのまれる気がするんだよな……
 あ、水面下でしている作文も一応あります。2021年末の振りかえりの段階ですでに「仕込みの段階」的なほのめかしをしていて、あらためて自分の手の遅さにがっかりしてしまいました……。今年はお披露目できるようにしたい……!

 イベントは、2022年は春と秋の文学フリマ東京に加え、日記祭にも初めて参加することができました。2023年も文学フリマ東京には参加したいと思っております。もろもろの状況が許せば大阪にも行きたいと思いつつ……行けるといいなあ……

 また、ウェブ上の活動の拠点を移しただけではなく、通販もBOOTHからBASEに移行しました。
 これはピクシブ社のトランスジェンダー女性社員へのハラスメントに抗議する意味合いでの対応です。
 こういう事態にどうするか、という判断も難しいです。事件が最初に発覚した直後の文学フリマ東京で、Pixiv小説編集部のかたが私のブースを訪ねて本を買ってくださったことを思い出します。私は賞をいただいた作品の掲載を取りやめてもらうぐらいのことまでしたほうがいいのか……と悩んでいたくせに、賞をいただいてありがとうございます、とへらへら笑って名刺を頂戴しました。性加害の話はできませんでした。
 私の勤務先では、私が知るかぎり今のところピクシブ社で起きたような性加害は起こっていません。それは当然で、そもそも勤務先はトランスジェンダーの社員が自分の素性をオープンにして働ける環境ではありません。完全に埋没している、あるいは違和感を抱えながらも騙し騙しやっている社員がいる可能性はもちろんゼロではありませんが、どういったかたちでも「社内にトランスジェンダーの社員がいる」という認識を持っている社員はいないと思います(私を含めて)。
 そんな私の勤務先でも、旧弊的なマナー本が刊行されており、外部からの批判を受けて内容が改善されたということがありました。私自身、この内容はあんまりではないかと思いつつ、一社員として指摘することはできずにいて、他力本願ながらとても救われましたし、批判には感謝しています。
 関係があるようなないような自分語りをしてしまいましたが、抗議や批判などの外部からの圧力は、やはり有効だと私は考えます。昨年9月の段階でピクシブ社からは原告の請求内容に対し全面的に責任を認めてお詫びする旨が発表されましたが、直接の加害者である男性上司をめぐる対応には疑問が残るため、当面BOOTHは閉めたままとさせていただきます。
 このことについてこうしてコメントするのがたいへん遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

 今年も現段階では昨年以上にしんどい予感しかないのですが、流れにのみこまれてしまって書けなかった……となるのではなく、書くことで抗い、流れを変えていければと思います。ちょっと勇ましいこと言いすぎな気もするけど新年の抱負なのでこのくらい言っておこう。環境は何としてでも変えるつもりだし。
 元旦からだらだら書いてしまいましたが、よかったら見守っていただけるとうれしいです。

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